古くから宿場町として栄え、にぎわいをみせていた大津の中心市街地「大津百町」
ただ、近年は時代の移り変わりとともに、そのにぎわいをみることも難しくなりました。そのなか「かつてのにぎわいをもう一度」と、さまざまな取り組みが進められています。そして、そのひとつとして「愛犬都市計画」というものがあります。これは、大津に残る本願寺のある歴史が所縁となっているようです。
当寺から徒歩数分のところ、本願寺近松別院および大津赤十字病院の南側に「犬塚」の碑と大きなケヤキの木があります。
本願寺第八代・蓮如上人(1415~1499)は、本願寺宗主継職後、その当時「参詣者の姿がない」と伝えられるほど衰退していた本願寺を積極的な教化活動により再興されました。その一方、上人の活躍・存在を快く思わない勢力もあり、いのちを狙う者もいたようです。
上人が活動の拠点でもあった大津・近松御坊に滞在されていたある日、食事を召し上がろうとお膳を手にすると、傍らにいた犬が突然飛びつきその料理を口にしました。料理には上人のいのちを狙うため毒が盛られており、その毒を口にした犬はいのちを落としてしまいます。
法敵の企みを察知して自らの身代わりとなってくれたのだと感謝された上人は、その後、犬を近くに埋葬してケヤキを植えられた ― そのような言い伝えが残っています。「愛犬都市計画」は、この事柄が由縁となっているようです。
時を遡れば樹齢は500年以上、現在も立派な姿をみせるケヤキは大津市指定文化財です。
◇所在地:滋賀県大津市逢坂2丁目(京阪電車「上栄町駅」下車すぐ)
<写真は11月下旬撮影>