本福寺の鐘楼には、戦時中に梵鐘(釣り鐘)が供出されて以来、代わりに大きな角石が吊るされてきました。
これまで梵鐘新調を望む声は度々あがってきましたが実現することなく、吊るされた大きな石が戦争の悲惨さと、供出によって失われたという歴史を語り続けてきました。
その中、この春に県内北部の真宗寺院より、梵鐘の無償譲渡のお申し出が寄せられました。事情により本年中に寺院を解散されることとなり梵鐘の譲渡先を探しておられたところ、ご縁あって当寺の鐘楼の状況をお知りになって、ご連絡をいただきました。
その後、やむを得ず解散されるご寺院の思い、「寺の梵鐘だけでなく、歴史や門徒の思いを譲り受けていただきたい」との思いをお聞きした上で、住職として譲り受ける思いを固め、当寺役員会および総会においてご門徒の了承を得ました。そして本日12日、吊り上げ工事を日を迎えました。
職人さんたちの丁寧な作業によって、譲渡いただいたご寺院や関係者の方々が見守る中、およそ80年ぶりに梵鐘が吊るされました。奇しくも戦後80年という節目の年に、有り難いご縁を通して梵鐘をお迎えすることができ、本来あるべきその光景を見て、感慨深いものがありました。
作業終了後には、数回の試し撞きをおこないました。本梵鐘はおよそ30年前にご門徒や地域の方々の懇念によって新調され、とても美しい響きであると地元では評判であったようです。当寺では住宅が密集しているという周辺環境もあり、日常的に撞くことは難しいですが、梵鐘に込められた皆さまの思いを大津の地にて引き継いでいきたいと思います。
なお、11月の報恩講法要において、梵鐘のお披露目とご報告をさせていただく予定です。このたびご縁をいただいたご寺院さま、作業に従事いただいた皆さま、またご理解ご協力いただいた皆さまに心より御礼を申しあげます。


